改正健康増進法の施行で病院の敷地内完全禁煙となりました。
僕はタバコを吸わないので,あんまり関係ない
…とはいかない。
デイケアのメンバーでタバコを吸う人は何人かいて,その人たちにデイケア中はタバコを吸いに行かないようにしなければいけない。
休憩時間に敷地外に出て吸える――なんて病院もあるみたいですが,僕の勤務する病院は立地的に困難。ルールとして素直に従ってくれる人がいる一方で,物陰に隠れて吸っている人もいます(見つけて厳重注意しましたが)。
病院のルール,というより法律を守ってもらうために,一定時間の禁煙――できれば完全な禁煙をしてもらいたい。
とはいえ,禁煙が難しいことは知っているし,「禁煙をさせる」のがどれだけムリなことなのかもわかっている。それでも病院職員として心理屋として,対策は必要。
有効な手段はないのか,そんな思いで手にしたのがこの一冊。
なんでも,読むだけで禁煙ができ,実際にできた人が多くいるらしい。
著者はもともと1日60~100本吸っていた超ヘビースモーカーだったようです。あるときに「世界中の喫煙者にタバコをやめさせてみせる」と宣言し,自身の禁煙を達成。そのときの経験と知恵を紹介しています。
はじめに,著者は「なぜ禁煙が難しいのか」を理解するのが大切だと語る。基本的に人は「恐れているから」タバコを吸う。タバコがなければ人生がつまらないのではないか,損をするのではないか,と。
その上で,著者は断言する。
「誰でもタバコはやめられる。それも簡単にやめられる」
書かれている内容のほとんどは,タバコがもたらす悪害について。ただし,よくある健康上の不都合――真っ黒な肺を見せるとか――ではなく,日常生活がどれだけタバコに支配されているかを,これでもかと書き綴っています。
タバコを買わなくてはいけない,お金を払わなくてはいけない,定期的に吸わないといけない,吸える場所を探さないといけない,いつでも吸える環境にいないと落ち着かない,などなど。
喫煙者は常にタバコのことが頭にあり,タバコを吸うために生活スタイルを組み立てなければいけない。
タバコを吸わないライライは,タバコを吸えば癒される。だからタバコを吸う?
いやいや,よくよく考てみてくれ,そのイライラはタバコを吸っているから感じるのであって,タバコを吸わなければそんな煩わしい思いをする必要がない。
「タバコが人生の楽しみを与えてくれる」というのはタバコ業界が仕組んだ洗脳であって,実際にはタバコがあなたの人生を制限している。
タバコをやめれば,わざわざ買いにいかなくてもいいし,お金を払う必要もない。吸い場所を求めて彷徨うこともない,ニコチン切れでイライラすることもない,タバコによる健康のリスクを気にすることもない,コソコソ吸うこともない,いつかやめないとなぁなどと考えなくてもいい。
そもそも,初めてタバコを吸った時「おいしい」と思った?そんなものを吸い続ける必要って,あるの?
あなたはそんなモノから解放されるべき。
禁煙は苦しい?その苦しみはタバコを吸っているから。タバコをやめた瞬間からあなたは自由を手に入れられる。
「あなたは,タバコをやめてもいい」
理解しておくべきこととして,以下のことを挙げています。
また,「離脱期間中に協力できること」に,下記をすすめています。
ずっとそう言い続けることが大切です。禁煙している人は,自分の努力から得られる幸福感と,周りの友人や同僚の支えによって禁煙を続けられるのです。
僕の勤務する病院は禁煙外来はやってませんが,正式な方法はこちらになるんでしょうか。
厚労省 禁煙支援マニュアル(第二版)
循環器学会等 禁煙治療のための標準手続書(第7版)
どちらも喫煙者の健康リスクにフォーカスし,禁煙への動機付けをしているようです。それと比べ,本書は精神面――個人の自由や幸福――に焦点を当てています。
今後,喫煙場所の縮小や値上げなど,喫煙者への締めつけ(?)は厳しくなるでしょう。それでも吸い続けようとしてしまうのが喫煙の厄介なところ。喫煙という身近な依存性にどう対応するか。
禁煙を考えている人はもちろん,支援者にも使える一冊です。
はじめに
1 私は世界一のニコチン中毒者だった
2 なぜこんなにやさしく禁煙できるのか
3 なぜタバコを吸うのか、理由が答えられますか
4 あなたは罠にはまっている!
5 タバコを吸うのは、なぜ?
6 タバコは習慣ではない、麻薬中毒だ
7 タバコ会社の強烈な洗脳力
8 タバコは何も与えてくれない
9 ストレスを和らげるという幻想
10 退屈を紛らすという幻想
11 集中力を高めるという幻想
12 リラックスさせてくれるという幻想
13 コンビネーション・タバコの悲惨
14 タバコをやめて失うものがあるか?
15 自ら進んで奴隷生活に甘んじるなんて
16 週XX円節約しよう
17 タバコの害はすでに体に広がりつつある
18 吸えば吸うほど疲労感が沈殿する
19 タバコ自身が生みだす恒常的不安感
20 喫煙者の心の奥にひそむ不吉な黒い影
21 喫煙の利点
22 精神力でやめようとするな
23 減煙は禁煙よりずっと難しい
24 とり返しがつかない「ちょっと一本」の油断
25 ときどき吸う人、10代の喫煙者、吸わない人
26 自分の異常さに気がつかない、隠れて吸う人
27 社会的プレッシャーに怯える喫煙者
28 必ず成功する禁煙のタイミング
29 麻薬中毒者をうらやむことはない
30 禁煙すると太るって本当?
31 まやかしの動機で禁煙しても失敗するだけ
32 禁断症状などもともと存在しない
33 禁断症状からの離脱期間を乗り切る
34 禁煙の石を粉々にする”一服”の破壊力
35 職業がら禁煙しにくい人
36 禁煙に失敗する二つの理由
37 代用品を使っても効果はない
38 もう吸う必要のないことを心から喜ぶ
39 素晴らしい真実が見えるとき
40 さあ、最後の一本を吸おう
41 最後の警告
42 五年間のフィードバック
43 沈みゆく船に残された哀れな喫煙者を救え
44 吸わない人へのアドバイス
終章 タバコ・スキャンダルに終焉を
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