瞑想を通じて,マインドフルネスを体験する――頭を「からっぽ」にするレッスン

本の紹介

読書家としても知られるビル・ゲイツが2019年に「マインドフルネスを試してみたい人にはパーフェクトな入門書だ」と絶賛し、2020年にも「はじめの一歩としてうってつけ」と、あらためて推薦した本。

著者はイギリス保健医療委員会の臨床瞑想コンサルタントとして活動する元仏僧。チベットの寺院で正式な仏僧となった後、「瞑想を誰にとっても身近なもののし、なるべく多くの人に瞑想にしたしんでもらいたい」との理念を持ち、瞑想普及のための団体「ヘッドスペース」を創設した方。

マインドフルネスは本や論文をいくつも読んできましたが、ここまで読みやすくマインドフルネスの意義や実践方法を語った本はなかったように思います。

「なんでかな?」と思い読み返すと、冒頭で、瞑想とマインドフルネスを区別することが大事だと書かれています。

マインドフルネスが今ひとつ理解しにくい理由に、マインドフルネスと瞑想(または禅)を同じようなものとして解説している本や記事が多いことがある。なので、いくら「科学的に認められた〜」などと謳っても、宗教臭さを感じてしまい、理解しがたいものとして距離を置こうとする心理が働いてしまうのではないかと思います。

本書では、マインドフルネス――「今、ここ」に意識を置き、留める――を得るために、瞑想がもっとも適していると語る。瞑想を通じて、マインドフルネスを体験する――手段と目的をはっきりと分けて解説しているのが特徴と言えます。

個人的な意見として、武道やヨガ、太極拳など身体の動きに意識を集中するものや、茶道や華道、書道など所作に意識を集中するもの、料理やプラモデル作りなど工程を意識するもの、さらにはワインやウイスキーのテイスティングも「今、ここ」にある感覚に集中する――マインドフルネスを得る方法は無数にある。

そのなかでも瞑想は「ただ、座るだけ」。
いちばん手っ取り早く実践できる手段である。

とはいえ、シンプルだからこそ難しさがある。
湧き上がる感情や記憶、思考に対してどのように対応すればいいか…

著者が修行時代に導師から助言されたエピソードを交え指南してくれており、このエピソード(喩え話)がおもしろく、本書の読みどころでもあります。他にも,瞑想中の心地よい感覚には「他の人にも分け与えるように」,不快を感じた時は「大切な人の不快さだ」と想像するなど,なるほどなあと思うところが多いです。

ビル・ゲイツの紹介のとおり、マインドフルネスの入門書として最適であり、ここからいろんな書籍を読み理解を深めるのもいい。また、いろいろと調べたけど今ひとつ腑に落ちないという人には得心の手がかりとなる一冊だと思います。

頭を「からっぽ」にするレッスン もくじ

第1章 まずは「からっぽ」を知るために
第2章 10分間瞑想をはじめる前に
第3章 10分間瞑想をはじめてみましょう
第4章 「10分間瞑想」を日常にするためのヒント
第5章 マインドフルネスの極意
第6章 日々をマインドフルに過ごすために
第7章 マインドフルネスのキーワード
第8章 マインドフルネスで人生を好転させた体験談
付録 科学が証明するマインドフルネスの効果
訳者あとがき

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