以前読んだ発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術が面白かったので、次はライフハックのような本を出さないかなあと期待していました。本書が出版されて半年、現時点でAmazon評価が470件!しかもその多くが高評価と、発達障がいでここまで評価される本が出るとは…
著者は30代半ばの男性、大学生のときにADHDと診断され現在コンサータを服用、同時に双極性障害も持っている(ASDも少しあるようだ)。仕事は非正規雇用の不動産営業とライターの掛け持ち、過去に事業で失敗した借金2000万円を返済中。
症状の程度は、一般就労で何とか暮らしている、といったところでしょうか。ただ、何かのきっかけで一気に坂を転げ落ちてしまいそうな危うさを感じます。
そんな著者が発達障がいあるある――物忘れ、スケジュール管理、注意欠陥と過集中、お金、食事、身だしなみ、アルコール、不眠、感覚過敏、片付け、人との距離感などなど、自身のエピソードを交え、使えるグッズや具体的な対処方法をコミカルに紹介します。
本書で書かれているサバイバル術は、発達障がい者が「よりラクに、より快適に、より優雅に生きられる環境を自ら作り出す」ことを目的にしています。また、「きちんと生活をしよう」=「快適な生活をしよう」であり、そのために生活の設備投資の重要性を説く。
「生活を積み上げていく」という言葉がいいですね。
文章は軽快で楽しく読めますが、根底には、いつ今の生活が崩れるかわからない、という不安や切実さを感じます。「うつの底」を経験したからこそ語れる「うつの底」にいる人へのメッセージ――発達障がい者のライフハック集としても使えますが、最終章を読むと、本書の本分はサバイバルガイドなのだと思い知る。
支援者としては最終章をしっかり押さえつつ、書かれているアイデアを相談者の問題や症状の程度に合わせて使っていきたい。
かなりおすすめの一冊です。
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