スウェーデン発の世界的ベストセラー。
今,まさに読んでおくべき本。
著者はスウェーデンでもっとも注目されている精神科医で,前作「一流の頭脳」もベストセラーになったそうだ(未読です)。
かつては贅沢品だったスマホも,今では誰もが手にする必需品になった。
僕の勤めるデイケアでも,60代の利用者がガラケーからスマホに替え,「使い方を教えてほしい」と聞いてくるようになった。
そのスマホが人間の精神に与える悪影響を,数々の研究結果を引き合いに出し警鐘を鳴らす。
スマホの長時間利用によって集中力の低下,うつ症状,睡眠不足,自分の容姿に対するイメージの悪化などが引き起こされているという。
スマホ依存とうつ症状は「警戒すべきレベル」の関係にあり,「うつ的な人ほどスマホを長時間使用する傾向」と,「スマホを長時間使用する人ほど将来うつになるリスクが高くなる」という,両方向の結果が出ているそうだ。
学習面では,教室にスマホを持ち込まないグループとサイレントモードにしてポケットにしまったグループでは,前者のほうが成績がよかった――これは複数の研究で見られたという。
スマホは手元にあるだけで集中力を削がれてしまう。気づけば画面を見てしまい,いつの間にか時間が過ぎる。たとえ短時間で切り上げても,意識の切替えは時間が掛かるため,作業効率は低下する。
著者は言う,「スマホは魅力的すぎる」と。
なぜそこまで魅力的なのか?
理由は簡単で,本書でも言及している――アプリの製作者がそのようにデザインしているからだ
その魅力は強力で,10ヵ国の学生を1000人集めスマホをなくせばどんな影響があるかを調べた研究は,「禁断症状」のため半数以上が脱落したという。もはや生活必需品ではなく,スマホが体の一部となっているのだろう。DSM5でゲーム障害が記述されたが,近い将来スマホも依存性として認定されそうだ。
スマホ依存の影響はさらに拡大しそうだと著者は危惧する。
というのも,本書で取り上げられている研究結果は2013年から2014年に発表されたもの。現在,この頃よりもスマホの利用時間は長くなっており,利用者も低年齢化(高齢化も)している。デジタルネイティブなんて言葉があったが,小さいうちからデジタル機器に触れることはポジティブな面だけでなく,ネガティブな面も拡大する。
スマホが精神悪化につながるのであれば,心理屋として対応策を考えておく必要がある。
僕自身のことを言えば,SNSはほとんどやらないものの,何気なくスマホをいじって,思った以上に時間を経過させていたことが…けっこうある。
最後のページに書かれたスマホとの付き合い方のアドバイスを参考に,まずは自分のスマホの使い方を見直そうかと思う。
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